なぎさ海道

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vol.4
2015.6.29
新しい大阪湾づくり

明石のタコは、なぜおいしい!?

第4回 お魚かたりべ 山嵜さんに聞く


取材・文/牟田 由喜子

浜にあがったばかりのマダコ。おいしいマダコを選ぶポイントは、「足が太くて短いこと」「皮にたるみがないこと」「体色が濃いこと」と山嵜さんは言う。


なんとも愛嬌のある姿形で人気のタコ。
夏場はマダコの旬で、プリッとした食感と甘味を増したタコがたくさん水揚げされます。
高たんぱく低カロリーのタコは、健康を気づかう人にとっても優れた海の幸です。

タコといえば明石のマダコが有名ですが、それはなぜ?
半夏生(はんげしょう)にタコを食べる風習とは?
タコってどんな生き物なの? おいしく食べる方法は?
お魚かたりべの山嵜清張さんが話してくれました。


「半夏生」って
タコを食べる日なの?

夏至から数えて11日目、2015年は7月2日が半夏生です。 半夏生とは、半夏(はんげ)というサトイモ科の薬草が生える季節を知らせる雑節(二十四節気に含まれない日本だけの暦日)のひとつです。このころまでに田植えを終わらせないとお米の収穫量が減ってしまうという田植の時期のデッドラインという意味合いでつくられた暦日だとか。

関東ではお正月によく酢ダコ(ミズダコ)を食べますが、関西では夏至から半夏生にかけての期間にマダコを食べる風習があります。この時期に関西の鮮魚店ではマダコが大々的に売られます。

では、なぜ半夏生にタコを食べるようになったのでしょう。

タコの八本足のように稲がしっかりと田んぼに根付いてくれますように!という農家の願いから、この風習が始まったといわれています。実際には、「暑い夏を、栄養豊富なタコを食べて乗り切ろう」という、土用のウナギの風習と似ています。とはいえ、天然ウナギの旬は実は冬。土用の丑の日の発端は、夏に売れないウナギを買ってもらうために平賀源内が考案した、いわばキャンペーンだったわけですが、マダコの旬は夏。夏バテ防止に一年中で一番おいしいタコを食べる風習の方が、理にかなっているような気もします。特に関西では、麦が刈られ麦ワラが出来るころ(6~7月)に水揚げされるマダコがとてもおいしく、「麦わらダコ」という愛称で親しまれています。

「節分に恵方巻きを食べる」ように、「半夏生にマダコを食べる」風習が、関西から全国展開する日は近いかもしれませんね。







干しダコは、明石の夏の風物詩

大阪湾周辺の海は
おいしいタコの宝庫!!

半夏生の風習もさることながら、大昔からタコは関西の人々にとって身近な食材だったようです。それは、大阪湾沿岸から弥生時代にイイダコ漁に使っていたと思われる土器の壺(タコ壺)がいくつも発見されていることからもわかります。現在、関西でタコといえば、「明石のタコ」と大阪泉州の「泉だこ」が有名です。

明石のタコがおいしい理由を、山嵜さんは次のように話します。「それは、明石海峡付近の地形と潮にあります。明石海峡の西側の播磨灘には「鹿の瀬」漁場が、東側の大阪湾には「沖の瀬」「上ノ瀬」漁場が控えています。どちらもマダコやマダイがたくさん捕れる関西有数の漁場です。明石海峡では潮が1日2往復、行ったり来たりと流れます。潮流は、速いときは7ノット(時速13kmほど)を超えるので、明石のマダコは速い潮流の中で踏ん張ってエサ(エビやカニなど)を追い、身の引き締まったタコに成長します。つまり、明石海峡の速い潮流が身のしまった太い足を育み、豊富な良いエサがタコ自身の味を良くしているのです」また、明石漁港から徒歩5分ほどの「魚の棚商店街」には明石ならではの魚介類が並びます。夏場の店先ではタコ商戦で賑わいます。タコが明石の観光資源に一役買っているというのも、明石のタコが有名な理由かもしれません。

一方で、大阪湾の泉州地域で捕れるマダコのおいしさも見逃せません。大阪湾で捕れるマダコは「泉だこ」という地域ブランドで、平成22年に登録(大阪府漁業協同組合連合会)されました。

同じマダコでも、速い潮流で鍛えられた「明石のタコ」は、プリッとしっかりした食感が、また、比較的水深の深いところで漁獲される「泉だこ」は、身のやわらかさが特長といわれます。どちらも味わってみたいですね。




明石海峡。遠方に見えるのは淡路島。手前右側が播磨灘で左側が大阪湾


魚の棚商店街(明石漁港から徒歩5分ほど)

かなりの切れ者!?
タコの体と生き方は?

マダコについてもっと詳しく知りたい方はコチラ
(大阪府立環境農林水産総合研究所のサイトへ)

タコの種類は世界で250種ほどといわれますが、日本で食用になっているのは主に、本州から台湾、朝鮮半島の南部、オーストラリア、大西洋、地中海などの温帯海域に分布するマダコ(1~4kg)、北海道や東北の寒い海にすむミズダコ(30kgほど)と、イイダコ、テナガダコがあげられます。明石でタコといえばマダコですが、冬~早春にはイイダコ、春先にはテナガダコもおいしい時期をむかえます。

タコは軟体動物(貝)の仲間ですが貝殻をもたず、胴-頭-足が一直線上にあるユニークな設計で、頭から足が出ているので頭足類といいます。タコには高度に発達した大きな脳(神経の塊)があります。この脳は、足、口、目、内蔵などを統括する神経節につながり、タコは周囲の状況を把握して、体を周囲に同化させて、天敵を避けたり、エサを捕獲するなどの反応を瞬時に起こすことができるのです。

マダコのオスは周年捕れますが、メスは産卵に入ると少なくなります。マダコの産卵は6~9月ごろなので、メスが卵を産む前の初夏ごろがマダコの旬となるわけです。産卵後の母ダコは卵がふ化するまでの約1カ月間、エサも食べずに卵に新鮮な水を吹きかけて酸素を与え、吸盤でホコリをぬぐうなどの世話をします。そして稚ダコがふ化すると力尽きて死んでしまいます。タコの寿命は、メスは1年、オスは長くて1年半ほどです。

協力:大阪府立環境農林水産総合研究所 鍋島靖信

吸盤でわかる!?
オスとメス

マダコの雌雄は、足についている吸盤の形で見分けます。メスの吸盤は、足のつけ根から先端にかけて、大きいものから小さいものへと規則的に並んでいます。一方、オスの吸盤は、並び方が不規則で、ところどころに大きいものが混じっています。 味の差は定かではありませんが、「メスの方が身がやわらかくておいしい」という人は、売り場で吸盤を見てタコを選んでいるようです。




手前がメスの足の吸盤で、奥がオスの足の吸盤


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日本一を誇る明石のマダコの漁獲高