なぎさ海道

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vol.2
2014.11.28
新しい大阪湾づくり

大阪湾のシラス、絶品ですよ!

第2回 漁師さんが語る“シラス漁”


取材・文/牟田 由喜子

大阪湾で捕れた鮮度抜群の生シラス。泉州田尻港内に、大阪湾の生シラスが食べられるお店があります。


炊きたてのごはんに、ポン酢をかけた釜揚げシラスをたっぷりのせていただく幸せ。
卵とじ、焼き飯、パスタ、酢の物、ふりかけなど、
シラス料理は、子どもからお年寄りまで人気のメニュー。
釜揚げ、ちりめんに加工されたシラスは、
どこの町の店先にも並ぶ、私たち日本人にはとても身近な食材です。
実は、大阪湾を代表する漁業といえば「シラス漁」なんです。ご存知でしたか?

シラスとはどんな魚でどのようにして捕られているのでしょう。
漁業歴30年の北村英一郎さん(大阪市漁業協同組合代表理事組合長)に、
シラス漁の漁法と大阪湾の漁の現状を伺いました。


「シラス」って、いったい誰の子?
「イカナゴシラス」「シラスウナギ」……。
シラスと名のつく魚はいくつかあります。シラスとは、卵からかえって間もない透明な稚魚のことをいい、 湯がくと白くなるので、シラスといいます。 イカナゴシラスは、早春にくぎ煮にするイカナゴ(別名コウナゴ、関西ではカマスゴという)の稚魚です。 シラスウナギは、あの貴重なウナギの稚魚。

では、私たちがいつも食べている釜揚げやちりめんの「シラス」は、いったい何の稚魚でしょう? 

はい、正解はイワシです。

日本周辺の海域で捕れるイワシは、主に「マイワシ(真鰯)」、「カタクチイワシ(片口鰯)」、「ウルメイワシ(潤目鰯)」の3種です。

画像提供:大阪府環境農林水産部水産課

地域によって呼び名があるようですが、
一般的にこの3種の稚魚が「シラス」です。
大阪湾で捕れるイワシは、マイワシとカタクチイワシのほぼ2種に限られますが、
大阪湾のシラスといえば、まずカタクチイワシの稚魚だと思ってよいでしょう。

シラスの旬は? とたずねると「捕れるときが ”旬”」と北村さん。
大阪湾でのシラス漁は、5月~12月中旬(春~晩秋)まで行われます。



シラス漁に適した
「船びき網(バッチ網)漁業」

現在、大阪湾で行われている漁法は、まき網(巾着(きんちゃく)網)、船びき網、底びき網、刺網(さしあみ)、小型定置網などが挙げられます。

昔(海岸が埋め立てられる前)は、地引網漁業が盛んでしたが、現在は、シラスやイカナゴのような泳ぎの遅い小魚群や小型の回遊魚群の漁に、船びき網(バッチ網)漁業が用いられます。

大阪湾の船びき網漁業は、一般的に2隻の網船と1隻の運搬船の3隻1チームで行われます。
2隻の網船が魚群を抱え込むように網を投げ、平行に並んで網を引きます。
網の先は、網戸ほどの目の細かい網が袋状になっていて、そこに魚(シラス)がたまります。袋網にたまったシラスは運搬船が取りあげて漁港に運びます。 運搬船は、大漁の時には1日数回漁場と港を往復することもありますし、
手船(魚群探知機で魚を探して網船を先導する)の役割も担います。
細かい目の大きな網を2隻でゆっくり引っ張るので、比較的波の穏やかな湾内の漁に適した漁法です。
別名“バッチ網”と呼ばれるのは、網の形がバッチ(ももひきの長くて足首まであるもの)に似ているからです。



午前3時30分
「大阪丸」シラス漁出発!
英一郎さんは、弟の北村高良さん、北村光弘さんと、「大阪丸」3隻1チームで週4回、大阪湾でシラス漁を行っています。 ある1日をレポートしました。

1.午前3時30分、泉佐野漁港を出発。
2.2隻つながった網船には、次男の高良さん、三男の光弘さん。
      「手船」兼「運搬船」を操縦するのは長男の英一郎さん。
3.網船2隻は息を合わせて並走する。
4.手船は凪や潮を読み、魚群探知機で確認しながら網船を誘導。
5.シラスの群れが確認できたら2隻の網船は離れて網を広げる。
6.シラスが網に入ったら袋網のロープを引く。
7.シラスの入った袋網をクレーンで釣り上げて海水を切る。 8.鮮度が命のシラス。新鮮さを保つため氷を入れながら、
      網カゴにシラスを入れ分ける。
9.手船は運搬船に早変わり。捕ったシラスを漁港に運ぶ。
10.今日は大漁! 運搬船は漁場と港を3度も往復。
11.正午前に漁は終了。網を上げて2隻の網船をくっつける。
12.昼すぎ、泉佐野漁港に到着。
13.とれたてのシラスは岸和田の入札所へ。

画像提供:大阪市漁業協同組合

北村さん、お疲れさま。今日のシラス、高値がつくといいですね!!


地元岸和田に
入札所が開設された!
港では、シラス船到着のサイレンを聞きつけて加工業者が集まります。品定めをするのは、その道数十年の店主たち。昨年までは大阪府内に入札所がなかったので、漁業者は湾内で漁獲したシラスを府外(兵庫県など)の加工業者へ届けていました。

しかし、平成26年2月、地元の岸和田に入札所が開設されたことにより、北村さんらのシラスは、目利きの加工業者が集まる競りにかけられるようになりました。

北村さんらは、入札所の開設を歓迎しています。
その理由は、例えば、消費者は白いシラスを好む傾向があります。競りにかけずに加工業者に届けると、「白い」というだけで高値がついたり、逆に、味が良くても白くなければ安値で卸さなければならないことがありました。しかし、目利きの加工業者が集まる入札では、色の白さより、味の良いシラスに高値がつけられます。捕った魚を、納得できる値で卸すことができれば、漁業者の士気は上がりますからね。






撮影協力:大阪府鰮巾着網漁業協同組合



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